ガバナンス¶
ガバナンスとは?¶
ガバナンスとは、あるステークホルダーのグループがそのシステムまたは組織の重要な変更について決定を下すプロセスです。多くの中央集権的な組織は、理事会のメンバーや役員のような重要な意思決定者の指名を通じてガバナンスのプロセスを実行してきました。MakerDAO の仕組みでは、リスクパラメータの変更は MKR ホルダーが Dai クレジットシステム内で投票する事で行われます。
MKR ホルダーは Dai のクレジットシステムをどのように管理するのか?¶
Dai のクレジットシステムが成功するためには、システムのステークホルダーが協力してさまざまなリスクパラメータの策定に対し投票する必要があります。リスクパラメータの例としては、担保資産の種類、発行可能な債務の限度額、および CDP 保有者に請求される安定化手数料などが含まれます。これは、システムに直接組み込まれているオンチェーン上の投票メカニズムによって行われます。
Maker チームは、ステークホルダーが投票に使用するための使いやすいユーザーインターフェイスであるガバナンスダッシュボードを作成しました。ステークホルダーは、Dai のクレジットシステムを構成するスマートコンタクトと直接やりとりし、投票を行うことができます。
過去には、MKR ホルダーが参加した最初の投票の 1 つとして、MakerDAO プラットフォームがどのように進化していくかを決める重要な要素である、段階的な分散化のための合意が取られたことがありました。
現在、Maker チームは、積極的な情報提供とガバナンスへの取り組みを行うことにで、システムが自律的に発展できるような仕組みを作っています。時間が経つにつれて、Maker チームはガバナンスに対しての影響力を徐々に弱めていくことで、MKR ホルダーがシステムを独立して統治できるようになります。MakerDAO を取り巻くコミュニティが成長するにつれて、システムのガバナンスはより分散化された状態に進化していきます。
どのように投票するのか?¶
投票するには、MKR ホルダーは自身のトークンを投票システムに転送して「ロック」する必要があります。転送を終えると、ガバナンスダッシュボードにロックした MKR の数に応じて、さまざまな提案に投票することができます。
投票できたか否かを確認するには?¶
あなたの投票はガバナンスダッシュボードに反映されるので、そこで確認することができます。
投票がすでに開始されている場合でも参加できるのか?¶
はい、いつでも投票に参加する事ができます。あなたは投票コントラクトをセットアップして、MKR をロックするだけでいつでも投票することができます。
一度行った投票を変更することは可能か?¶
はい。投票後も、ポータルサイトで別の選択肢を選び直すことができます。ポータルサイトで変更を行うと、投票に使った MKR は元の選択から取り下げられ、選択した新しい提案に対し投票されます。また、新しい提案に投票せずに投票を削除することもできます。
投票結果はどのように集計されるのか?¶
投票は、それぞれの提案に投票した MKR の合計額によって集計されます。1 MKR は 1 票として扱われます。例えば、50 人の MKR ホルダーが合計 600 MKR を提案 A に投票し、100 人のトークンホルダーが合計 400 MKR を提案 B に投票した場合、提案 A が 60%の投票数を得て承認されるということです。
投票にはどんな種類があるのか?¶
Maker のガバナンスシステムの投票には、ガバナンス投票とエグゼクティブ投票という 2 種類の投票タイプがあります。ガバナンスの投票は、重要事項に関するソフトコンセンサスの確立と、今後行われるエグゼクティブ投票の提案に対するコミュニティの反応を測定するために使用されます。これらの投票は、コミュニティがガバナンスプロセス全体をどのように進めていくかを決定します。
エグゼクティブ投票は、担保の種類を追加または削除することや、関連するリスクパラメータの設定などの形でシステム変更を”実行”します。ガバナンス投票は一種のシグナルだと考えることができますが、一方でエグゼクティブ投票は Dai のクレジットシステムの変更を制定します。
どのようなことに対して投票を行うのか?¶
ガバナンス投票を通じて、MKR ホルダーはほとんど全ての議題についてソフトコンセンサスを求めることができます。このガバナンス投票の最初の例として、MakerDAO を支える 5 つの重要な原則を確立した財団からの提案があります。
またエグゼクティブ投票プロセスを通じて、MKR ホルダーは Dai クレジットシステムへの変更に直接投票します。例としては、新しい担保タイプの追加やそれらに関連するリスクパラメータの設定があります。このリスクパラメータには、清算率、債務限度額、清算ペナルティ、および安定化手数料が含まれます。リスクパラメータは、担保の種類ごとに個別に設定され、いくつかのリスクチームによる評価に基づいて変更が提案されます。MKR ホルダーは、変更に投票する際にこれらのリスク評価を考慮に入れます。
MKR ホルダーはシステム運用の際に発生する支出の計画にも投票を行います。この支出はシステム全体の安定化手数料の一部から調達されます。つまり将来的には、Dai 預金金利を設定できるだけでなく、安定化手数料の一部を必要なサービスプロバイダー(オラクルプロバイダ、開発者、リスクチームなど)に支払うこともできます。
MakerDAO ファウンデーションはこれまでに投票を行ったことがあるのか?¶
いいえ。MakerDAO の組織が持っている予備の資金は、財団自体の継続的な運営のために使われるものであり、投票には使用されません。
ガバナンスの投票はいつ行われるのか?¶
ガバナンスの投票の提案はいつでも提出することができます。
ガバナンス投票の期間は?¶
投票期間の長さは通常 2〜3 日ですが、ガバナンスを取り巻くコミュニティ内のアクティブな議論によって変更されることがあります。この件に関しては公式コミュニケーションチャンネルで遠慮なく議論に参加してください。
エグゼクティブ投票はいつ行われるのか?¶
エグゼクティブ投票はいつでも行うことができます。この投票は Dai クレジットシステムの状態を変更し、下記に示す「継続承認投票」プロセスを用いて行われます。
継続承認投票とは何か?¶
MKR ホルダーは、ガバナンス全体の目的に反した提案を却下するとともに、システムの健全性とペグの安定性を維持することを義務付けられています。有益な提案が導入され、MKR ホルダーがこの価値を認識すると、大多数の投票によってこの新しい提案をシステムの新しい状態として実装することになります。
このモデルでは、新提案と旧提案間における票の多数派によって投じられた票の連続性が、現状のシステムへの変化を促し、改善を実行します。またシステムの変更を元に戻すには、全く新しい提案を提示する事が重要です。古い提案を再開することは不可能です。
継続承認投票システムはなぜ必要なのか?¶
エグゼクティブ投票は、システムの現在の状態を意味します。システムはずっとアクティブに稼働しているため、ガバナンスも同様に継続的である必要があります。MakerDAO では、現状のシステムに対する新提案が導入される可能性が常にあります。一方でもし MKR ホルダーが新提案に同意しない場合は、変更を認めないという意味で現状のシステムに対し投票する必要があります。
システムの継続性は、任意の MKR ホルダーによって常に新しい提案が提出されうるという事実によって強調されています。したがって、システムは継続的に監視および管理されるべきであり、またそれを実現可能にする投票構造を生み出す必要があります。MakerDAO システムでは、継続承認投票システムがこの問題を解決します。
エグゼクティブ投票の期間は?¶
エグゼクティブ投票の期間は特に制限されていないため、提案はシステム内にいつまでも存在します。もし最初に十分な投票が得られない場合、その後提案に人気が出た後に投票を行うといったことも可能です。これは継続承認投票の設計の一部です。
投票ダッシュボードはどのように機能するのか?¶
このダッシュボードは、投票者の MKR をシステムにロックする、代理のスマートコントラクトである特別な投票用のコントラクトを使って設計されています。この投票は、ステークされた MKR の安全性を確保するために、ホットウォレットとコールドウォレットの作成を通し管理されます。
ユーザーが指定された同様のコールドウォレット及びホットウォレットを使用する場合、一度設定すれば、投票が可能になります。ただし、ユーザーが他の コールドウォレットかホットウォレットを使用する場合は、リンクを解除して新しい投票用コントラクトを作成します。
ユーザーはホットウォレットのみで投票に参加することも可能です。これはセットアッププロセスを簡略化できるというメリットがある一方で、MKR へのセキュリティは低下します。
投票代理コントラクトを設定する目的は?¶
ガバナンス投票メカニズムは期間限定の投票ですが、エグゼクティブ投票は継続承認投票によって行われます。投票代理コントラクトにより、MKR ホルダーはホットウォレットによる利便性と、引き出し先をコールドウォレットに限定することによるセキュリティを確保しながら、ガバナンス及びエグゼクティブ提案に対する MKR での投票を行う事ができます。
代理コントラクトとは何か?¶
代理コントラクトは、成功も失敗もする複数のトランザクションを承認できる一つのスマートコントラクトです。これによって複数のステップの実行を、1 つのトランザクションに署名するだけで行う事ができます。
代理コントラクトを設定する必要があるのはなぜか?¶
コールドウォレットからホットウォレットを経由して MKR を使って投票する場合、代理コントラクトにはセキュリティ的観点で大きな利点を持っています。この仕組みによって、システムの安全性を心配したり、いくつものトランザクションをマニュアルで実行することなく、ガバナンス投票とエグゼクティブ投票の両方に参加することができます。
代理コントラクトは、なぜ、また誰に対して何を許可しているのか?¶
代理権限を付与する際には、コントラクトが投票システム上で MKR をロックし、ホットウォレットを使い投票をコントロールすることに対し承認を行います。ホットウォレットが許可されるのは、投票の実行と、コールドウォレットへの MKR 返却という 2 つの行為です。
投票を行う度にコストとしてガスが必要か?¶
はい。投票はすべてオンチェーン上で行われるため、投票コントラクトの設定や投票の実行に関する各トランザクションにはガス代がかかります。
投票にはどのくらいのガスが必要か?そのガス代はホットウォレットとコールドウォレットのどちらから支払われるのか?¶
投票用のコントラクトを設定するには、4 回の取引が必要で合計約 1M のガス代になります。この 4 回のコントラクトはホットウォレットとコールドウォレットのそれぞれで行われるので、両方のウォレットに ETH があることを確認しておいてください。
必要なガスプライスは(https://ethgasstation.info/) で確認することができます。
計いくつのトランザクションに署名する必要があるのか?¶
投票コントラクトを設定するには、これら 4 つのトランザクションが必要です。
- リンクの開始:まず最初に、どのウォレットをホットウォレットとして使用するかを指定します。この取引は「リンクの開始」と呼ばれ、あなたのコールドウォレットから設定する必要があります。このトランザクションは、自分がコールドウォレットを管理している事を証明し、どのウォレットをホットウォレットとして使用するかを指定するためのものです。
- リンクの承認:次に、あなたがシステムに対して自分のホットウォレットの指定と、自分がウォレットを管理している事を証明し、ウォレットと承認トランザクションとの間のリンクを作成します。またこのアクションによって、あなたが投票するために使う個人用の投票コントラクトを作成します。
- MKR トークン転送の承認:コールドウォレットとホットウォレットの間のリンクが作成されたら、投票コントラクトにあなたの MKR トークンが転送されるように承認を行います。
- MKR トークンのロック:最後に投票の重みを明示するために、MKR を投票システムのコントラクトに転送します。これは投票コントラクトに MKR を追加するために何度でも行うことができます。
これらの手順を行う事で、ガバナンス及びエグゼクティブ投票の両方に参加する事ができます。
ホットウォレットとコールドウォレットの間のリンクは、正確には何をコントロールするためにあるのか?¶
ホットウォレットとコールドウォレットの間のリンクは、あなたの MKR を投票システムコントラクト内にロックする事で、投票のために別のアプリケーションに接続する必要がないことを意味します。一旦 MKR をロックしたら、コールドウォレットを再びシステムに接続する必要はありません。またホットウォレットでは、投票かコールドウォレットへの MKR の返却のみしか行うことができません。そして MKR は、コールドウォレット以外のアドレスに引き出すことはできません。
誰がロックされている MKR をコントロールしているのか?¶
ロックされている間も、MKR が投票システムコントラクトから絶対に出ることはないため、MKR のコントロールの全権はあなた自身にあります。あなただけが MKR を投票コントラクトから引き出すことができ、それはあなたのコールドウォレットにしか戻すことができません。
どのように MKR がロックされていることを確認するのか?¶
ホットウォレットをガバナンスダッシュボードに接続すると、MKR の合計が”In Voting Contract”というヘッダー下に表示されます。
どのように MKR を引き出すのか?¶
ロックされた MKR を引き出すには、まずガバナンスダッシュボードにアクセスしてホットウォレットを接続し、次に”Voting Contract”をクリックします。すると画面の右下隅に、”Withdraw from voting contract”というリンクが出てきます。このリンクをクリックして、引き出したい金額を選択してから取引を確定します。ロックされた MKR はコールドウォレットにしか引き出すことができません。
MKR を引き出すと私の以前の投票にどのように影響しますか?¶
最新の提案からあなたの MKR を引き出すと、システムからあなたの投票が削除され、あなたの MKR はどこにも割り当てられていない状態になります。これにより、新しい提案は以前の提案よりも多くの MKR 票を集めればいいだけなので、新しい提案の可決に必要な MKR 票は少なくなります。将来 MKR で再び投票する場合、再度手続きが必要です。
投票後のロック解除は迅速であるべきか?¶
いいえ、MakerDAO のガバナンスに積極的に取り組んでいるユーザーには、継続承認投票のために自分の MKR を投票ダッシュボードに残しておくことをお勧めします。
MKR がロックされている間に、コールドウォレットから他のアドレスに MKR を送ることは可能か?また、それをしたらどうなるのか?¶
いいえ、投票システムにロックされている MKR を移動することはできません。あなたのコールドウォレットから MKR を他のアドレスに送りたい場合は、まず最初に投票システムコントラクトから MKR を引き出す必要があります。
リンクしたコールドウォレットにさらに MKR を送信するとどうなりますか?¶
ユーザーは 1 回のトランザクションで、新たな MKR を投票コントラクトに加えるという選択ができます。このオプションは、ガバナンスダッシュボードにアクセスして”Voting Contract”をクリックし、次に”Top-up Voting Contract”ボタンをクリックすると見つけることができます。
ホットウォレットとコールドウォレットのリンクを解除することはできますか?¶
はい。ガバナンスダッシュボードに移動して、Wallet のリンクを解除することができます。”Voting Contract”をクリックしてから、”Break Wallet Link”ボタンをクリックします。一般的には新しいホットウォレットかコールドウォレットを選択する必要がある場合以外には、特にリンクを解除する必要はありません。あなたの投票コントラクトから MKR を引き出せば、リンクを解除する必要なくあなたのコールドウォレットで MKR を自由に使う事ができます。
MKR 投票に複数のアドレスを使って参加することはできますか?¶
いいえ、現在投票コントラクトには1つのアドレスからしか送金できません。